日曜日のなのはな

北極を探しにいく・日曜日更新+気まぐれ

サカナクションに心震わせる休日

今週のお題「おうち時間2021」

日曜日の夜、明日から仕事やだなぁと思いながらダラダラと過ごしていたら、母親から連絡がきた。

YouTubeサカナクションがプレミア配信してるよ」

そういえば最近、"夜を乗りこなす"と題してサカナクションはオンライン配信イベントをやっていた。そしてこの日が最終日だ。せっかくなので、TVでYouTubeを繋いでみた。

この日やっていたのは、2017年のデビュー10年記念イベントだった。

このライブは、ファン投票による人気曲ランキングを発表したり、サカナクションに縁ある方がVTR出演し、リクエスト曲を出したりしながら進んでいく。皆が選ぶ曲が興味深くて、いつのまにか見入っていた。私は、熱いファンとまでいかないものの、大抵の曲を知っているほどにサカナクションが好きなのだ。

 

ランキングは上位曲になると、発表ごとにメンバーがエピソードを話している。すると、ボーカルの山口一郎さんが、不意に涙ぐんだ。

確かランキング1位に輝いた「目が明く藍色」発表のときか。その時話していたのは、「目が明く藍色」ができるまでのエピソードだった。

当時、サカナクションは2枚目のシングル「アルクアラウンド」を発売した後。キャッチーな曲調と独創的なMVが話題になり、この曲でサカナクション知名度は上がった。でもそれが、サカナクションそして山口さんを悩ませたらしい。

次のアルバムを作るにあたって、派手な曲、いわゆる万人受けする曲を作るべきなのか。でも自分達が作りたいものは違うと。

そこで当時のディレクターの関口さんに相談した。関口さんからの言葉はこうだった。

「やっちゃいなよ。好きな曲作ったらいいじゃん。別にこれでバンドは終わりじゃないんだし、次から次に自分の気持ちを表現することを忘れちゃいけない。」-2017年5月11日SCHOOL OF LOCK!サカナクション10周年!」より引用

「サカナクション10周年!」 | SCHOOL OF LOCK! | サカナLOCKS!

この言葉が山口さんの背中を押した。そして出来上がった「目が明く藍色」は、10周年ライブでファン投票ランキング1位に輝いたのだ。関口さんがいなければこの曲は出来なかったと、山口さんは涙ぐんだ。

 

これを聞いて、私がサカナクションを高校生の時から好きでい続けている理由がわかった気がした。

私は、一曲をきっかけにそのアーティストを好きになっても、新曲が出るごとに興味を失うことがある。その原因のひとつが「万人受けを目指したとき、アーティストの色が変わってしまう」からだ。それは、アーティストが持っていた尖りが、時を経るごとに丸くなるような感覚だ。誰にでもわかりやすくとっつきやすく、そして刺さらなくなってしまうような感覚だ。

では変わることは悪いのか?それは違う。音楽を含め、エンターテインメントは常に変わっていくべきだと思う。そうでなければ新鮮な感動は生まれない。

何が変わるべきか。何が変わらないべきか。

サカナクションはきっと「自分たちが表現したいものに忠実な姿勢」が変わらないのだと思う。でも表現するテーマや方法、アプローチする観点は斬新に変わっていく。だからサカナクションが新曲を出すたび、私たちはいつも、新鮮な感動に包まれる。

それって、売れれば売れるほど、難しくなっていくんだと思う。

聴く側には想像もつかないような葛藤が、幾夜もあった。そう考えると、いつものイヤフォンから流れてくるメロディーに、一層の重みを感じる日曜日だった。

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