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北極を探しにいく・日曜日更新+気まぐれ

台湾ホラー映画『呪詛』感想

今週が忙しくて、土曜日には放心状態だった。こんなときはホラー映画と激辛料理でストレスを発散したい。

ということで、つい最近ネトフリで話題になり映画ランキング1位を占めている『呪詛』を観てみた。

news.yahoo.co.jp

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全体の感想

結論からいうと、めちゃくちゃ怖い!!そして色んな意味で無理!!!!!!!!!だった。これが映画館で上映されたとしても観る勇気は私にはありません。

まず多方面のジャンルの恐怖要素が全部ある。

  • 和製ホラーみたいなじわじわくる恐怖
  • 土着信仰、宗教系の不気味さ
  • パラノーマルアクティビティみたいなドキュメンタリー系のリアルさ(Found Footageというらしい)
  • パニック系の恐怖
  • グロい、不潔、虫あり、蓮コラ系あり
  • 人間怖い系の恐怖

これ、どれかひとつでも苦手な途端にアウトじゃないか。

虫もパニック系も無理だったけど、とにかく全体的にジメジメしていて不潔だった。なんだろう、洋画の綺麗なグロとは違うリアルな不潔感。食事中にうっかりフラッシュバックしてちょっと吐きそうになった。

でも土着信仰系のホラーが好きな人にはきっと堪らない。私も2chのコトリバコなどが好きなので、儀式の意味やモデルとなった神様に関する考察を読むのが面白かった。

なにより構成が凄くてちょっと感動した。ちゃんと伏線も回収されるんだけど、スッキリするどころか余計怖くなる。そして最後の仕掛けが半端ない。ホラー慣れしていない誰かにぜひ観てもらって感想を聞きたい。その人が夜眠れなくなっても責任は取れないけど…私ですら、夜中の物音が少し怖くなったのだ。ホッホーシアンイーシーセンウーマ

こんなにおすすめしたところで大体の人は観ないだろうから、観た気になれるあらすじをまとめようと思う。(どれだけ観て欲しいんだ)

尚、なるべくわかりやすくするために時系列を組み直して詳細は省いている。

あらすじ※ネタバレあり※ 

はじまり

主人公はリー・ルオナンという女性。冒頭、彼女が部屋でひとり動画を配信し、視聴者に語りかける場面から始まる。

「私は6年前、恐ろしいタブーを破った」。その呪いによって周りの人が次々死んでしまう。そして娘にも降りかかった呪いを解くために視聴者に協力してほしいと、祈りの呪文と符号を伝える。ここから主人公が録画した数々の記録映像に移っていく。

娘との暮らし

まずは数週間前にさかのぼり、主人公が5歳の娘を引き取る場面。6年前の事件以来、主人公は精神科にかかっており、養育力に欠けるとして娘は里子に出されていた。

今回ようやく娘と一緒に暮らせることになり、嬉しそうな主人公。でも初日の夜からさっそく窓ガラスが急に割れたり怪奇現象が起き続ける。

娘は「悪者がいる」と天井を見上げて叫び出し情緒不安定に。あといたるところで芋虫が大量発生。

台湾の家って日本と雰囲気が似てるもんだから、普通の日常が脅かされる感じが怖い。

6年前のタブー

いったい、6年前に何があったのか。

主人公は恋人とその弟の3人でオカルト系動画配信をやっており、ネタ集めのために恋人の一族が住む集落に向かっていた。その時の録画映像が流れはじめる。

一族は大黒仏母という邪神を信仰していた。3人は、10年に一度の大黒仏母に名前を捧げる儀式に参加することになる。実はその時、主人公はすでに娘を妊娠していた。一族のオババにはそれがバレており、3人だけでなくお腹にいる娘の名前も捧げさせられる。

その後おとなしく部屋にいればよかったものを、3人は抜け出して立ち入り禁止の地下道を荒らしてしまう。これが犯したタブーだった。

地下道には道中にたくさんの鏡と子供の仏像が置かれ、一番奥には大黒仏母の仏像があった。奥まで入った恋人は気が狂って供物の髪の毛を食べながら死に、弟は口の中いっぱいに歯が生えて「なにも聞くな」と叫びながら自殺。(この場面が怖すぎた)

地下道の入り口にとどまった主人公は奇跡的に命拾いをし、流産しかけるも無事に娘を産んですぐ里子に出したのだった。

ちなみに恋人の弟が地下道で回していたビデオカメラは主人公が持ち帰ったのだが、観た人が次々と死んでいくので屋上の部屋に仏像と共に安置していた。

娘との暮らし(呪いの進行)

戻って主人公と娘の暮らしの場面。主人公が目を離したすきに、娘が取り憑かれるようにしてその屋上の部屋に入り込んでしまう。呪文を叫びながらビデオカメラを再生する娘を必死でやめさせるが、呪いのせいで半身不随になる娘…(ここも怖すぎて薄目)

どんどん呪いが進行していく。

娘を助けるために主人公がお寺に連れていく場面がある。ここで、7日間なにも食べさせるな!と念を押されたのに、熱が出た娘に食べさせてしまうし、自力で点滴を打っちゃう主人公。とにかくやったらあかんことを漏れなくやらかすのなんでなん。(呪いのせいで娘や主人公の体内には芋虫がいるらしく、断食はそいつらに栄養を与えないためだったらしい)

娘の容体はさらに悪化。全身ただれるわ、穴ぼこだらけになるわで集中治療室に入る。医者からいつどうなってもおかしくないと告げられた主人公は覚悟を決める。

最後の手段

娘を救うために、主人公が向かったのはあの地下道。大黒仏母の仏像の前に辿り着くとPCを繋ぎ、冒頭と同じように祈りの符号と呪文を思い浮かべてほしいと視聴者に問いかける。でも

「ごめんなさい、私はひとつ嘘をついた」

と言い、ある動画が映し出される。

それは主人公が雲南省の高僧を訪れる映像だった。大黒仏母の真相を解くために話を聞きにいったのだ。そこでわかったのは、祈りの呪文の意味が「自らの名前を捧げ共に呪いを受ける」だということ。

呪いのことを知れば知るほど、呪いの力を受けるということ。集落は代々、大黒仏母の呪いの力を外に漏らさずに弱めるための儀式をしていたこと。

つまり私たち視聴者は主人公から見せられた呪文と符号により、自ら呪いを受けていたということになる。より多くの人が呪いを受けることで、娘にかかる呪いを分散することができるからだ。

しかも動画に映っていた主人公は妊婦。ということは6年前の時点ですでに色々知っていたのだ。じゃあみんなが呪いを受けると知りながら警察や里親、自分の両親にまで地下道の話をしていたのか?娘の呪いを薄めるために?恐ろしすぎる。

私たちが混乱するなか、場面は地下道に戻る。主人公が目隠しをつけ、大黒仏母にカメラを向ける。決して見てはいけない、呪いの根源とされる大黒仏母の顔。そこにかかった布をめくり、映っていたのは…

気になる人はぜひ作品を観てほしい。キモかった。

視聴者が引きずり出される

リングのビデオテープじゃないが、拡散しなければいけない呪いはいつだって「明日は我が身かも?」とヒヤヒヤする。自分ごととして捉える恐怖が一番怖い。

でも今回はそれより直接的かつ大々的で、なるほどこれが今の時代かと感動した。しかも呪いの呪文を唱えさせるなんて。ホラーが苦手な人には辛い。

土着信仰ってなんで怖いんだろう

大黒仏母は、鬼子母神や大黒天がモデルではないかと言われている。鬼子母神は自分の子を育てるために人間の子を食べていた。まさに我が子のためなら何でも犠牲にする象徴。大黒天はインドの破壊神シヴァ神(カーリーマーラ)が由来で、大黒仏母のビジュアルと近い。

観ただけではわからないことも、解説を読むにつれて点と点が繋がり、めちゃくちゃ面白かった。

特に主人公が最後に地下道で取った行動は、意味を知ると背筋が凍った。観ていない人にもわかりやい解説があるのでぜひみてほしい。

他にも、本能的に不気味な要素がたくさんあり、集落の場面になるたびに気が滅入った。唱えるときの裏拍手みたいな手の組み方すら怖い。大黒仏母の像なんて、よくここまで禍々しさを表現したものだ。

やはり身近にある神道仏教の文化に近い要素だからなんだと思う。台湾、もしかしたら日本の秘境にもこんな土着信仰があるかもしれない。そう思うと、映画の呪いよりも断然怖い。

こうしてストレス発散どころかストレス度が上がる映画を観てしまったけど、面白かった。でももう観たくない。この後は激辛の麻婆豆腐を食べました。