今週のお題「今月の目標」
この1ヶ月で三島由紀夫を勉強する、と決めたのは一昨日のこと。
仕事終わりにふとメールを見ると、King & Princeの神宮寺くんの舞台に当選していた。
めちゃくちゃ驚いた。
ジャニーズのチケット当落は凄絶な戦いだ。そのうえ外部の舞台。倍率は決して低くなかったと思う。岸担の私がなぜこの舞台を申し込んだかは、長くなるので割愛する
そんな記念すべき、神宮寺くん初の外部舞台がまさしく三島由紀夫の『葵上』『弱法師』だったのだ。
渋い。渋すぎる。
神宮寺くんが直近で出演した舞台といえば、ジャニーさん演出のキラキラなミュージカルだぞ?羽のついた衣装着て歌ってたんだぞ?
そこからの、三島由紀夫作品ストレートプレイ。180度違うジャンルにびっくりだ。そしてミュージカル以外を観たことがない私にとっては未知の世界。当選してからというもの、ワクワクしている。
でもよく考えたら、葵上とか弱法師ってなんだっけ・・・?近代能楽集とは?
そもそも三島由紀夫もあまり知らない。さすがにやばい。
私は感性が特段優れた人間ではないので、事前知識がないと感じ取れないことが沢山ある。
なのでこれを機会に、1ヶ月後の観劇当日を目指して三島由紀夫を予習しようと思う。
さっそく少し齧ってみたところ、舞台が俄然楽しみになった。
三島由紀夫ってどんな人?
三島由紀夫は1925年生まれ。激動の第二次世界大戦を生き抜いた人だ。
45歳の若さで亡くなっており、なぜ?と思ったら、自衛隊にクーデターを促す演説をしたあとに割腹自殺をしたらしい。過激すぎる。
三島由紀夫にとって戦後の日本は、アメリカに従うばかりで理想からほど遠かったみたいだ。
ちなみに、割腹するとき脂肪が出たらイヤだからと、身体を鍛えていた。
めっちゃマッチョやん・・・キャラ濃いわ。
こんな感じで何だか全然小説家っぽくないんだけど、ノーベル賞候補になり、日本人で初めてアメリカの男性誌「Esquire」の「世界百人」にも選ばれ、世界でも高く評価された人だった。
三島由紀夫の作品に多かったのが、古典をベースに新しく創作した小説や戯曲。そのひとつに『近代能楽集』がある。
全部で13曲あり、その中の2曲が『葵上』と『弱法師』だった。
『葵上』ってどんな話?
まずひとつ目の『葵上』。元々の話が源氏物語だとか、能の謡曲だとか、結局どういうことなん?と混乱してたら、こういうことらしい。
葵上とは、光源氏の正妻だ。でも病に倒れてしまう。それは光源氏の元恋人・六条御息所の生霊が取り憑いたせいだった。そして葵上はついに死んでしまう。
近代能楽集の葵上
三島由紀夫の手にかかると『葵上』はこんな風に、現代を生きる人物へと変わる。
舞台は葵が入院する病室。光が看病していると、嫉妬心に満ちた六条康子の生霊が現れるのだ。
つまり『葵上』は、ドロドロの愛憎劇だった。
生霊になるなんて、康子の未練は相当強い。人間の嫉妬とか執念とか重たい愛とか、どす黒い感情がずっしりと押し寄せてきそうだ。それを目の前の舞台で観たら、どんな風に感じるんだろう。
現代の光源氏を演じる神宮寺くんも然ることながら、六条康子を演じる中山美穂さんの演技が気になってしょうがない。
『弱法師』ってどんな話?
"よろぼし"と読むこの作品。原典はこんな感じだった。
能の『弱法師』では主人公の俊徳丸が、人の進言を信じた父親から家を追い出されてしまう。悲しみのあまり盲目となり、乞食として生きていた俊徳丸を父親が見つけ、家に連れ帰るという話だ。
近代能楽集の弱法師
近代能楽集になると、あらすじはかなり違う。
- 俊徳丸 ≒ 俊徳(戦火で失明した青年)
- 父親 ≒ 高安夫妻(俊徳の生みの親)
- ≒ 川島夫妻(俊徳の育ての親)
- 新キャラ 桜間級子(調停員)
家庭裁判所の一室で、川島夫妻と高安夫妻は俊徳の親権を争っていた。
高安夫妻のあいだに生まれた俊徳は5歳のとき、空襲の戦火で親とはぐれてしまった。失明し浮浪児となった俊徳を20歳まで育てたのが、川島夫妻だったのだ。
生みの親と育ての親。決着はつかず、調停員の桜間級子が俊徳を部屋に呼ぶと、俊徳はどちらの親も虫けらのように扱い異様な空気となる。そんな様子を見かねて桜間級子は俊徳と二人で部屋に残り、話をする。
窓から見える夕焼けに、俊徳は「あれはこの世のおわりの景色なんです」と戦火の記憶を語り始める・・・
二つの共通点
二つの「弱法師」は舞台となる時代も結末も違うけれど、盲目の主人公にはどちらも孤独を感じる。この世界の地獄を見て、社会から零れ落ちた人間の孤独。
でも色々読んでみると、どちらの結末にも俊徳がこれから過酷な現実に引き戻されてしまう予感があるという。
現代能楽集バージョンは、親と生き別れて戦火に遭い、これまで非現実的な人生を生きていた俊徳が肉親に引き取られれば、普通の境遇に戻ってしまう。ある意味、現実に戻される。
だから公式サイトで最後の台詞が「現実的なもの全てに対する敗北」と表現されているのだろうか。
とんでもない演目だった
過去の公演を調べると、弱法師は20年前に蜷川さん演出、藤原竜也が主演していてビビった。私だったらそんな作品、恐くて演じられない。
両親に対する狂気じみた態度や、「この世の終わり」を激しく悲痛に話す長台詞、神宮寺くんはどんな風に演じるのか。
そして印象的な最後の言葉。あんなマッチョな人が書いたとは思えない、三島由紀夫のセンスが詰まった台詞だ。
葵上は六条康子が舞台の空気感を左右するだろう。そして弱法師は、神宮寺くんの俊徳が空気感を作る演目だと思う。
こうやって自分ひとりじゃ切り拓かない新しい世界を知れるの、オタ活の醍醐味だな。
どちらもめちゃくちゃ楽しみだ。