日曜日のなのはな

北極を探しにいく・日曜日更新+気まぐれ

今こそ聴いてほしいCHEMISTRY

私には今、熱烈に応援している推しがいるけれど、過去の推しをふと見たくなる夜はある。それが今夜だった。

現推しの、この夏最大のイベントが終わり、抜け殻状態になっていた私。あまりにも気持ちが入り込みすぎると辛くなって、逆に少し離れたくなるものだ。

そんなとき、CHEMISTRYのThe First Takeのフェス動画を見つけた。そういえば3日前に開催されていたな、と思い出す。

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CHEMISTRYといえば、オーディション番組『ASAYAN』をきっかけに結成され、今から20年前の2001年に発売したデビューシングル『PIECES OF A DREAM』が有名である。

その頃のCHEMISTRYも知っていた。でも私は、それからかなり月日が経ち、受験生の頃に何故かドハマりした。いや、何故もなにもない。堂珍義邦に一目惚れしてしまったのだ。

受験の夏、模試が長引いてしまって半ベソかきながら終わりかけのライブに行ったり、握手会で何回も握手するためにCDを買いまくったことは今も覚えている。

あれからまた時が経った今夜、久しぶりにCHEMISTRYを聴いてみた。

すると、あまりにも歌声が素晴らしくて、耳が溶けた。

当時は、割とヨコシマな気持ちから好きになったCHEMISTRYだった。でも贔屓目を抜きにしても、ファンになった頃からずっと、これだけは自信を持って言える。

CHEMISTRYは、今こそ聴いてほしい。

なぜなら、今が一番上手いからだ。

最近こそ疎いものの、デビューしてからCHEMISTRYの歌声は、ざっくりこんな変遷を辿ってきた、と個人的に思っている。

デビュー当時(2001年~)

デビュー曲『PIECES OF A DREAM』をはじめ、『Point of No Return』や『You Go Your Way』など数々のヒット曲をリリースしていた時期。この頃、堂珍さんの歌声は柔らかくもスッと突き抜けるような、透き通った歌声。まさしくクリスタルボイスだった。

一方、川畑さん(川畑要)は上手いんだけど、少々、喉が閉じているように感じた。(それでも上手いんだけど!)異なる声で「化学反応を起こす」のがコンセプトで組んだ二人だったけど、完全には混ざり合っていないような印象があった。

川畑さん爆上がり期(2003年頃~)

喉が閉じていて、少し平坦な歌声に聞こえていた川畑さん。それが急に、ある時期からかなり変わった。喉が開いて、よく通る歌声になったのだ。

私の見解ではおそらく、『My Gift to You』と『YOUR NAME NEVER GONE』の間あたり。単に歌い方を変えたのか、並々ならぬ努力が実を結んだのか、あるいは両方か…堂珍さんの歌声と親和性が増し、CHEMISTRYのハーモニーが一段と美しくなった時期だ。

堂珍さん停滞期(2007年頃~)

川畑さんは発声だけではなく、表現の幅もどんどん広がっていった。でも堂珍さんは2007年あたりから「高音が出しづらそう」と巷で言われ始める。いわれてみれば『空の奇跡』や『This Night』の高音パートは、昔よりも鋭くキツい印象を受ける。曲のエフェクトによる気もするが、当時の生歌を聴いたファンによる評価だったなら、本当に声の調子が万全ではなかった可能性は高い。

右肩上がり期(2010年頃~)

一時期は本調子じゃなかった堂珍さんも、少しずつ研究と練習を重ねたのかもしれない。「高音が出しづらそう」という感想はなくなっていった。それからの堂珍さんは、よく通る高音は変わらないまま、デビュー時と比べて、より力強い歌声になった。川畑さんの歌声も衰えることなく、レベルアップしていった。

そして今に至る。

それぞれが変遷を経た結果、世間が記憶している20年前の『PIECES OF A DREAM』よりも今のCHEMISTRYの方が確実に、透明感がありながら力強く、溶け合うようなハーモニーを奏でていると私は思う。

二人のたゆまぬ努力の積み重ねが、The First Takeで披露された最新の歌声には詰まっている。

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最後に私のオススメ曲を一方的に紹介したい。(曲名 / 収録CD)

ディープなR&B

ハーモニーが美しい

切ないラブソング

  • キスからはじめよう / 恋する雪 愛する空
  • nothing / fo(u)r

歌唱力に圧倒される

  • 最期の川 / Face to Face
  • for... / fo(u)r

話題の『ゴールデンカムイ』読んでもた

古来の狩猟・採集民族を描いたような世界観が好きだ。もののけ姫でアシタカがヤックルに乗って駆け抜ける姿はいつ見ても憧れるし、家の本棚には『シュナの旅』まで揃ってるし、モンゴルのゲルにいつか泊まってみたいと思ってる。

そんな私が友人に薦められて『ゴールデンカムイ』を読んだところ、ハマってしまった。

ゴールデンカムイ』は、今めちゃくちゃ売れている漫画のひとつ。らしい。どうやらシリーズ累計発行部数は1,600万部を超えた。らしい。

週刊ヤングジャンプで連載されているので、これは青年漫画に分類されるのだろうか。今なら9/17(金)まで、アプリで全話無料で読める。

ynjn.jp

普段、そんなに漫画へ強い興味を持たない私はこの漫画がすごく売れていることすら知らなかった。でも『ゴールデンカムイ』を読もうと思ったのは、友人からの薦めと、無料開放に加え、アイヌ民族という最強キーワードがあったからだ。

ゴールデンカムイ』は簡単に言うと、アイヌ民族によって隠された莫大な金塊を探すバトル漫画だ。

舞台となるのは、明治末期の北海道。主人公は、日露戦争の戦場で「不死身」と言われた帰還兵・杉元。そしてアイヌ民族の女の子アシㇼパ。

二人は偶然出会い、同じく金塊を狙うライバルたちと戦いながら、金塊探しの旅に出る。

まず何が楽しいって、12-13歳ぐらいの小柄なアシㇼパが、華麗な弓裁きをもって、いとも簡単に巨大なヒグマを仕留めるのである。カッコよすぎて、私はアシㇼパちゃんに惚れてしまった。

なによりハートを奪われたのが、狩りや野宿をするうえでの豊富な知識。アシㇼパちゃんは、アイヌ民族で代々受け継がれている知恵を使って火を焚き、獲物を仕留め、調理する。しかもその知恵が、私たちも使えるくらい細かい粒度で説明されている。この漫画の一番好きなポイントだ。

白樺の皮は油が多くて長く燃えるから松明に使える

こんな感じの説明が、戦闘中にも入ってくる。これから先の人生、私が白樺の皮を燃やすことはおそらくないだろう。いや、できればあってほしくない。ディスカバリーチャンネルに出演したらあるかもしれない。

でもこういう知恵を知るのってなんか楽しい。

他にも、アイヌ民族の料理「チタタプ」(なめろうの肉バージョンみたいな料理)を作るシーンがあったり、身の回りの物や自然を「カムイ」(神様)として敬うアイヌの信仰が語られていたりする。読んでいたら、今まで全然知らなかったアイヌ民族の知識が自然と深まるのだ。

もちろん、主題は金塊探しバトル。金塊を狙うライバルとの戦闘シーンは血みどろだし、青年漫画なので(?)ネタも下ネタもいっぱい挟まってる。一方で、金塊の真相や登場人物の過去にも数えきれないくらい伏線が張られていて、それを読み解くのが面白い。私も二、三日で最新話まで読んでしまった。

ただ、『ゴールデンカムイ』は、手に汗握る面白さだけじゃなくて、普段の生活感やアイヌ民族を描写している良さがある。私はそこが好きだった。私みたいに狩猟・採集民族好きの人がいたら、読んでみてほしい。

ちなみに『ゴールデンカムイ』を最新話まで読み終わった夜、私は感化されすぎて、このめちゃくちゃ暑い時期にも関わらず、鍋を食べた。もちろんオソマ入り。(やめなさい)

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そのあと、Youtubeアイヌ民族に関する動画を見た。

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私よ、影響されすぎや。

日程調整、メンドくさい

この世には、面倒くさいのに無くならない業務がたくさんある。そのうちのひとつが"日程調整"だ。

打合せの日程調整は、どんな仕事にもつきもの。新人も初期にやるような、基礎的な業務だ。

でもこの前、上司と雑談をしていたとき「日程調整って奥が深いよね」という話になった。今年異動してきた人の日程調整のやり方が少々厄介で、上司は手を焼いているらしい。

日程を決めるとき、まず候補日を出す必要がある。基本的な流れとしてはこんな感じだろう。

  1. 候補日(複数)を提示する
  2. 先方からOK/NGの回答がくる
  3. 日程が確定する

でもこの1.が、大人数になるほど難易度が上がる。一発で確定できるような候補日を洗い出すには意外と、センスが必要なのだ。それって何だろうと考えてみたところ、個人的にはこの3つに行き着いた。

尚、大前提として、私の職場は全員Outlook上のスケジュールを公開しており、互いに見られるようになっている。

出席者の優先度を決める

私の仕事は、とにかく関係者が多い。しかもみんな忙しく、Outlookのスケジュールには気持ち悪いぐらいびっしりと予定が入っている。その合間を縫って、全員が空いている時間を見つけ出すのは、不可能に近い。

そこで私は、議題に応じて、出席者の優先度をひそかに決めている。私が必須認定した出席者が確実に空いている時間を、候補日に選ぶのである。そうすれば自然と候補日も絞られてくる。

ただ、上位役職者が関わる場合は、自己判断で出席者の優先度を決めると危険なので、上司に相談している。

相手ごとに調整方法を把握する

これ、効率化のために結構大事だと思う。ここでいう"調整方法"というのは、例えばこんな情報だ。

  • Aさん:メールをあまり見ないので、必ずSMSで個別に候補日を連絡しておく
  • BさんOutlook上で空いている時間なら、勝手に予定を入れて良い
  • Cさん:忙しすぎるので、最悪の場合、別件とバッティングしている時間でもOutlookに入れてしまう(どちらをを優先するかはCさんに任せる)

最適な調整方法は、その人との過去のやり取りから判断することが多い。ただ、本人に聞いてしまうのも手だと思う。Cさんは、そのパターンである。

でも、Cさんにどうしても出席してほしいときはどうすればよいのか。

相手の状況を推測する

その時はCさんのスケジュールから”重要じゃなさそうな予定”を見つけ出し、その時間に入れてしまう。例えば"資料作成"といった予定とバッティングしても、調整できる可能性が高い。

ただ、Cさんと定期的に会話していれば、Cさんが今佳境にあるプロジェクトなんかも把握できたりする。それに関連する予定とバッティングしないように候補日を組めば、確率は上がる。

お客さんとの打合せ調整でも同じで、先方の繁忙期やイベントを把握していれば、その時期を避けた候補日を出すことで、一発で日程を確定できる可能性が上がる。

手間をかけないために頑張るけども 

今まで特に意識したことはなかったけど、忙しい関係者たちを巻き込んだ日程調整には、仕事の基本が凝縮されていた。

面倒くさくて手間な業務こそ、ノウハウを蓄積させることで、迅速に気持ちよく片づけたい。そう思う人と思わない人で、実は個人差が出てくる業務なのかもしれない。

でもやっぱり、こんなに考えないといけない日程調整はメンドくさい。

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好きなアイスBEST5をやってみた

今週のお題「好きなアイス」

本格的な夏がきた。蒸した熱気が立ち込める部屋にいると、目の前に扇風機を置いても汗が止まらない。そんな日々にはアイスを食べるしかない。

YouTubeをパトロールしてたら、かまいたちのおふたりが、好きなアイスBEST5を発表していた。

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このBEST5シリーズ、見てて楽しい。自分のお気に入りがランクインしていると嬉しいし、自分で選ばないものが紹介されていると食べてみたくなる。

私も「好きなアイスBEST5」を選んでみた。

私の好きなアイスBEST5

第5位 ガリガリ君 ソーダ

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夏の暑い昼下がり、外で食べるなら絶対これ。学生のときは帰り道によく食べていた。めちゃくちゃ食べてたので、当たり棒が出たこともある。梨味とかみかん味とかに気移りしたこともあるけど、結局ソーダ味が一番いいんよ。スッとするあの味がね。

赤城乳業株式会社 (akagi.com)

 

第4位 MOW PRIME バタークッキー&クリームチーズ

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最近発掘した、158円くらいのちょっと贅沢なやつ。味の名前からして絶対おいしいやん…と思ったら本当に、期待を裏切らなかった。上にのってるクッキーがサクサクで、バターの香りが爆発する。クリームチーズは、ちょっと風味がある程度。とにかくクッキーがおいしい。

個人的には、ハーゲンダッツなくてもこれで満足できます。と言いつつ、ハーゲンダッツ食べれるならそっちを選ぶんやろけど。

MOW PRIME(モウ プライム)バタークッキー&クリームチーズ | MOW(モウ)アイスクリーム (mow-ice.jp)

 

第3位 ワッフルコーンのソフトクリーム

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子供のころからの憧れを引きずって、今も買ってしまうものがある。そのひとつがワッフルコーンのソフトクリーム。普段はバニラよりむしろチョコ派の私だけど、ソフトクリームだけは100%バニラに限る。そしてカリッと固めのワッフルコーン必須。(よくあるしなびたコーンはダメ。絶対。)

時々訪れる、ソフトクリームを無性に食べたくなる夜には、近所のコンビニでふらりと買って帰る。

ワッフルコーン濃旨ミルクバニラ |商品情報|ファミリーマート (family.co.jp)

 

第2位 BOXあずきバー

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あずきバー、学生の頃は見向きもしなかったのに、社会人になってからは摂取量が多いアイスランキング圧倒的1位。早くも味覚が年を取ってきたのか。甘いけどあっさりしていて、暑い季節にも寒い季節にも食べたくなる味。

そしてあずきバーだけは、ボックスで買うんです。なぜならカロリーが少ないから。いっぱい食べても許せるから。小豆なので食物繊維、たんぱく質も豊富。罪悪感が少ないアイス、最高(でも気づけばぺろりと2本食べている)。

BOXあずきバー | 商品情報 | 井村屋株式会社 (imuraya.co.jp)

 

第1位 白くまアイスバー

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フルーツが大好きな私。白くまアイスは、そんな私のためにあるといっても過言ではない。フルーツ味のシャーベット系も好きなんだけど、本物の果実がゴロゴロ入っている白くまアイスの魅力には勝てん。練乳氷の、素直な甘さもいい。余計なものがなにも入ってなさそうな味。

カップ白くまアイスも食べたことがあるけど、上にのってる梅のペーストが好かなかったので、私はバーをよく食べている。白クマアイスを発明した人は天才です。ありがとう。

白くま | 丸永製菓

 

以上、私の好きなアイスBEST5でした。

よく見たら、かまいたちのお二人が選んだアイスと全然被ってない。濱家が1位に選んだ板チョコアイスなんて、食べたことないぞ。スーパーでよく見るけどアレって美味しいんや…

アイスだけでも、人によって嗜好がかなり違うんですね。

 

余談やけど、カップのかき氷のみぞれ味を食べたくて探し回ってるんやけど見つからない。どこに売ってるのでしょうか。子供の頃はみぞれ味が一番好きだったのに…

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『鹿の王』が問いかける医療と病

『鹿の王』を読み終えたとき、今このタイミングで、自分がこの本を手に取ったことに不思議な驚きを感じていた。

なぜなら『鹿の王』は、”黒狼熱”という感染症をめぐる国と民族、そして人々の物語だったからだ。

あらすじを全く知らず、ただタイトルに惹かれて読んだ私。まるで今の世界を投影しているかのような展開に、驚愕した。

今こそ、読むべき1冊だったのかもしれない。

『鹿の王』上橋菜穂子(うえはし なほこ)| KADOKAWA

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あらすじ

『鹿の王』の舞台は、東乎瑠(ツオル)帝国の支配下にあるアカファ王国。この地で、その昔オタワル王国を滅ぼした"黒狼熱"とおもわしき病が現れはじめる。

主人公のひとりは、"黒狼熱"が蔓延した岩塩鉱で唯一生き残った、かつての〈独角〉の戦士、ヴァン。もうひとりは、オタワル王国の末裔で"黒狼熱"の治療法を探す、医術師のホッサルだ。

ヴァンとホッサルをはじめ、多数の登場人物が、それぞれの思惑を持ちながら”黒狼熱”の真相を追っていく。これが『鹿の王』のあらすじである。

はじめは”黒狼熱”の大流行を防ぐべく、ホッサルを筆頭に治療法を模索する。だが次第に、病の裏にひそむ政治的な動きがみえてくるのが面白い。様々な民族、立場におかれた人々の複雑な関係性、歴史、価値観が絡みあっていて、一読だけでは抱えきれないほど壮大な物語だった。

続きが気になってしょうがないような、スリルもある。でも『鹿の王』はそれにとどまらず、はっと立ち止まって考えさせられるような深さも散りばめられている。

現実世界に通じる多様性

この物語には文化も背景も違う人たちが多く登場する。その分、考え方も違う。

”黒狼熱”の重症患者に、ホッサルが新薬を打つべきか迷う場面がある。新薬は、過敏反応や身体への悪影響を及ぼす恐れがあった。アカファ人の患者は、「生き残る可能性にかけたい」と、危険を承知のうえで新薬を打つ。

一方で、東乎瑠(ツオル)人は、ホッサルが動物の血から作った薬を打とうとしない。命が危ないとしても、獣の血を体に入れることは、信仰する清心教に反するからだ。

東乎瑠人の呂那師は、ホッサルに言う。

「私共が救いたいと願っておりますのは、命ではございません」

「私共が救いたいと願っておりますのは、魂でござりまする」

儚く消える命の哀しさを救うために、医療を研究してきたホッサルにとっては、衝撃的な言葉だった。命が助かる可能性があるのに、その選択をしないことが理解できなかったのである。

現実の世界も同じだ。医療に対する意見は千差万別で、明確な正解はない。

医療は万能ではない

私が目から鱗だったのは、このシーンについて書いた夏川草介さんの解説だった。内科医でもある夏川さんは、こう書く。

「一方で私の本質的な哲理は、意外なほど呂那師に近い。ホッサルの黒狼熱に立ち向かう情熱に打たれつつも、彼のように病について「いずれ必ず隅々まで明らかになる日がくる」とは感じないし、リムエッルのように医学に対する万能感もない。医師が努力した分だけ患者が助かるのであれば、そんな気楽な世界もないという、ある種の暗い諦観が常に胸の奥底に沈滞している。」

これを読むまで私は、科学的な思考を持たない呂那師より、ホッサルの考え方に同意していた。でも、医者として医療の最前線に立つ夏川さんの言葉を読み、改めて考えさせられた。

別の場面では、アカファ王のこんな言葉がある。

「どこまで手を伸ばそうとも、届かないところがある。それらは、神々と悪霊の領域で、私たちはそのような、なにか途方もなく大いなるものに包まれているのだと、私は日々感じています」

ホッサルのように、”途方もなく大いなるもの”に立ち向かってきた偉人の努力が積み重なり、私たちが享受する医療はここまで来た。でも、生命はどこまでも未知のままだ。その果てしなさは、最前線に立ってこそ痛感するものなのだと思う。

また、医療を万能と捉えてしまった時、その傲慢さはきっと私たちに牙をむく。生命も病も常に、私たちが思いもよらない変化を遂げていくからだ。これからも”絶対”はなくて、私たちはそんな世界と共存しながら生きていくんだろう。

ヴァンが見た景色

ただ『鹿の王』は、だから諦めろ、と言っているわけではない。最後にヴァンが語るのは、偉人たちが必死な研究を続ける医療を含め、生を追う私たちを肯定する言葉だと思う。

「たしかに病は神に似た顔をしている。いつ罹るのかも、なぜ罹るのかもわからず、助からぬ者と助かる者の境目も定かではない。(中略)だからといって、あきらめ、悄然と受け入れてよいものではなかろう。なぜなら、その中で、もがくことこそが、多分、生きる、ということだからだ。」

”絶対”がない世界で、今もコロナの感染は広がり続けている。予防接種の是非が議論され、行動が問題提起され、なにが正解なのかわからない。それでも私たちは『鹿の王』に登場する人々のように、それぞれ自分で考え、選択していく必要がある。

自分、そして”自分たち”が生きていくために、何を選択するか。

『鹿の王』は、まさに今の私たちに問いかけているのかもしれない。

なお、『鹿の王』はどうやら、今年の9月10日に映画も公開されるようだ。やはり今、注目されている作品だったのですね。

映画『鹿の王 ユナと約束の旅』公式サイト

旧友に会う日の悩み

新人研修のときから仲の良かった会社の同期と会った。その子と前に会ったのは2019年の秋。四捨五入すれば約2年ぶりだ。

久しぶりに会った同期は、何も変わっていなかった。二人で辛いスリランカカレーを食べながら、お互いに近況報告や仕事の悩みを語り合う時間は、楽しいひとときだった。

ただ、私はひどく緊張してしまった。

同期と話していた時の自分の言動は、もはやあまり覚えていない。でも多分、めちゃくちゃどもってたと思う。仲が良い友達にもかかわらず。

 

どんなに仲が良くても、しばらく会わないと緊張してしまう。

これは私が密かに抱えている悩みだ。

社会人になってからは特に、中高・大学時代の友だちなど長らく会わない人が増え、悩みは深刻化するばかり。

マンツーマンのときが一番大変だ。ふぅ、とひと呼吸置くタイミングを見つけられない。自分を取り戻す時間がないまま緊張は高まり、なぜか焦ってしまって、言いたいことを言えなかったり、言いたくもない変なことを言ってしまったりする。

よく「旧友とはいつになっても、昨日会ったかのように話せる」みたいなことを言うけども、私は全く共感できない。ただ世間ではそう言うし、他の人たちは平気そうに見える。時間が経つと人見知り度がリセットされてしまうこの現象は、私特有のものなのだろう。

そもそも私の根っこは、「全力で陽キャのふりをしようとする陰キャ」なのだ。そうやって自分を納得させようとするけど、それにしてもリセット現象は、初対面に対する人見知りよりも辛いものがある。昔は気軽に何でも話せた相手と、うまく話せなくなってしまうのだから。

私だって本当は、昔と同じように友達と話したい。

どうすればこの性質を直せるのだろう。改善策があるなら知りたいものだ。

 

ただ、もし改善策がないとしても。リセット現象を理由に友達と会わない、という選択肢は私の中にない。緊張しても、どもってもいい。コロナ禍でみんなと会う機会が減ってしまった分、落ち着いた暁には、色んな人に会いに行きたい。

そのとき、もし私がとんでもなく挙動不審だったとしても、どうか温かい目で見守ってほしい。

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書きかけの地図

恥ずかしくて、投稿できなかった下書きがある。

少し前に、仕事で落ち込む出来事があった。私が落ち込むときは、たいてい自分の失敗や無能さが原因だ。今回もそれだった。

コトの経緯

発端は、ある人(Aさんとする)から質問を受けたことだ。業務の内容は書けないので、たとえ話で書いてみた。

  • Aさん 案内地図を作る人
  • 私   スーパーの責任者
  • Bさん スーパーの店長
  • Cさん 駐車場の責任者

Aさんはショッピングモールの案内地図を作っていた。でも困ったことに、スーパーの中の情報がわからず、地図におこせない。そこでスーパーの責任者である私に相談した。書きかけの地図を見て私は、スーパーの店長であるBさんが間取り図を持っていることを思い出す。

そこで私はAさんに、「店長のBさんに聞いてみて」と回答した。AさんがBさんに聞いたところ、間取り図は送られてきた。でもどこが生鮮食品エリアで、どこが飲料エリアといった情報までは書かれていない。地図を完成できなかった。

困ったAさんは、駐車場責任者のCさんに相談した。するとCさんは、店長のBさんに話を聞きながら地図のスーパー部分を自分で作ったのである。

伝書鳩だった

長くなったけど、つまりはこういうことだ。

私はただの伝書鳩だった。

Cさんは自ら進んで動き、仕事をした。

Cさんの動きを見て私は初めてその事実に気付き、恥ずかしくなった。

仕事をするということ

「地図を完成させる」というゴールがあるとき。

聞かれたことだけ答えるんじゃなくて、そのゴールを達成するために何が必要なのかを考える。自ら動き、必要なものを集める。誰かがやれてないことがあればそれに気づき、対応する。

そして地図を完成させる。

それが「仕事をするということ」だと思っていた。でもスーパー責任者の私は、それを怠った。書きかけの地図を見ていたのに。私は達成すべきゴールを知っていたのに。

「仕事がない」とボヤいてる私は、仕事を自分で見つけず、生みもしていなかったのだ。

さらに本音を言うと、「なんで駐車場責任者のCさんがスーパーの地図を書いとるねん」と一瞬怒りに駆られた自分がいた。

でもこんな結果を導いたのは、私自身の最低な消極的姿勢にほかならない。そんなヤツには、Aさんも相談しづらいだろう。

自分の存在意義

仕事をしなかった自分にも、一瞬でも怒りに駆られた自分にも、めちゃくちゃ落ち込み、反省し、腹が立って仕方なかった。

いつになっても自分は成長していないと、痛感した出来事だった。

周りに怒る前に、文句を言う前に。「ゴールへの到達」に焦点を当てたとき、自分は何をすべきなのかをもっと深く考えよう。そうでなければ、自分の存在意義なんてない。

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