日曜日のなのはな

北極を探しにいく・日曜日更新+気まぐれ

「働き方の損益分岐点」

最近、私は大学時代の友人と"課題図書"をやっている。読む本を決め、定期的にリモート電話で読んだ感想をシェアしているのだ。といっても、私が友人からおすすめの本を教えてもらい、読むことがほとんどだけど。

この前の課題図書は、この本だった。

『人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点』(木暮 太一):講談社+α文庫|講談社BOOK倶楽部

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「なぜ私たちの働き方はしんどいのか?」「どうすればしんどい働き方から抜け出せるか?」この本では、これらの問いを投げかけ、現代の資本主義経済のカラクリを紐解いていく。

考え方の根底にあるのはマルクスの『資本論』や、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん 貧乏父さん』だ。でも丁寧な説明とシンプルな図解の力により、タイトルの印象に反してとても読みやすかった。

私たちが日々会社で働き、稼いでいる給料はどんな考え方に基づいて支払われているのか?本書でそれを知ったときは、現実を突きつけられる思いだった。

労働力の価値

この本ではまず、資本主義経済における商品の値段について説明している。マルクスによると、商品の値段は「価値」によって決まるという。ここでいう「価値」の定義は以下だ。

価値  •••それを作るのに、どれくらい手間がかかったかで測られる
使用価値•••それを使って、意味があるかどうか(有益かどうか、 役に立つかどうか)で測られる

需要と供給のバランスといった「使用価値」 で商品の値段が変わることもあるけど、基準となるのはあくまで「価値」。さらにマルクスは、 こう書いている。

商品の「価値」の大きさは、「社会一般的にかかる平均労力」 で決まる

この理論は、労働力でも適用される。つまり、労働力の価値(給料)は「 明日も同じ仕事をするために必要な経費の合計」。そしてその支払額の基準となるのは「社会一般的にかかる費用」なのだ。

自分がいかに成果をあげたとしても、給料としてもらえるのは必要経費分。年次が上がれば給料が増えるのは、年次が上がるほど、所帯を持ったりして社会一般的な必要経費が増えるからにすぎない。

この仕組みは、1企業のみならず資本主義経済全体に存在している。資本主義経済の中で会社員として働くかぎり、私たちが得られるお金は「 明日も同じ仕事をするために必要な経費の合計」を越えることはない。

どんな働き方を目指すべきか

そんな資本主義経済の中で、どうすれば「しんどい働き方」から抜け出せるのか。筆者は、自己内利益を高めることが重要だと主張する。

年収・昇進から得られる満足感-必要経費(肉体的・時間的労力や精神的苦痛)=自己内利益

自己内利益を高める働き方に関して、私が印象に残ったのはこの言葉だった。

労働力を「消費」するのではなく「投資」する

例えば、一日立っているだけの仕事は、その日の体力と時間を使うだけで、将来の役には立たない「消費」になる。

でも社長のカバン持ちとして一日働き、高レベルのビジネス現場を見て、自分のノウハウに繋げることができたら「投資」になる。

労働力を「投資」することで、知識や技術を積み上げれば、将来的に自分の労働力の価値を高められる。それは将来、日々の労力を増やさずとも収入を上げられる土台になるということだ。

「投資」となる働き方をすること。それは私の職場でもいわれている、業務効率化につながるかもしれないと感じた。

私たちが目指すべき働き方は、作業の時間を減らし、その分、考え行動する業務に時間を割くことなのだと思う。「考え行動する業務」という表現にはしっくりこないのだけど、他に思いつかなかった。

「投資」となるのは、考え行動する業務だ。作業をたくさんこなしていると仕事をやっている気になってしまいがちだけど、それは私に何も残さない。自分の仕事をもっと生産性・創造性の高いものにしていくことは、会社への貢献だけではなく自分へのプラスになる要素なのだと感じた。

また、今後働くにあたって、「自分の投資になるか」という観点で仕事を選ぶことの重要性を痛感した。

最後に

ここで書いたのはあくまで一部だ。『働き方の損益分岐点』で書かれていることは、どれも当たり前のことなのかもしれない。でも、なぜそれが重要なのか、説得力を持って書かれている一冊だった。私の今後のキャリアを考えるにあたって、ひとつの指標になるような本だった。興味があればぜひ読んでほしいと思う。