私と牡蠣の歴史は浅い。
というのも、私の母親は牡蠣を食べると調子が悪くなってしまいがちで(今もそうかはわからないが)、私もその体質を受け継いでるのではないか…とビビっていた。その結果、大人になってからも加熱した牡蠣すら食べたことがなかった。
でも食べることは大好きな私だ。白くプリプリとした牡蠣は見るからに美味しそうで、「どんな味だろう」といつも想像を膨らませていた。
そして一昨年の秋、相方にそそのかされてついに人生初の牡蠣を食したのである。
自宅から徒歩2分の居酒屋で、牡蠣の天ぷらをいただいた。まさに、磯味のクリーム。これは食べなきゃ人生損してると思った。めちゃくちゃ美味しかった。
食べたあとになって、母親みたいに体調が悪くなったらどうしよう…と不安に駆られたが、結果は何事もなかった。それ以来、カキフライや牡蠣のオイル漬けといった加熱済の牡蠣はよく食べている。だが生牡蠣はいまだにチャレンジできない。あれも食べたら絶対に美味しいはずなのだけど。
そして先日、相方にまたそそのかされ人生初の牡蠣小屋に行った。ちなみにその二日前、私は支社長もいる飲み会で謎におなかを壊し、一晩中苦しんだばかり。なぜそんな不調のタイミングでと思うが、誘われたら食べたくなってしまったのだ。
牡蠣小屋は、好きな魚介類を注文し、目の前の網で自ら焼くスタイルらしい。
うん、とても美味しかった。
美味しかったけど、私はまた牡蠣にビビってしまった。ちゃんと加熱しないとノロウイルスが怖い。殻に口をつけるのも無理。
ビビったがために、私は牡蠣を網の上で焼き続け、せっかく大きかった牡蠣の身はショボショボに萎んで小さくなっていった。美味しい出汁が全部出てしまってたと思う。
しかも、牡蠣小屋を出たあとも影響は続いた。食べてから私は48時間、いつ腹痛がくるかしれない恐怖に苛まれたのである(ノロウイルスの潜伏期間が約48時間のため)。
私が食べた牡蠣たちがフラッシュバックする。あれは火が通っていたのだろうか。お腹を壊して万全じゃないときに食べたし。弱った胃腸がやられたかもしれない。
仕事中も気が気じゃない。牡蠣についてググりまくったので、牡蠣の食あたりには三種類あることも覚えてしまった。
結局何も起きないまま48時間過ぎたときは心底ホッとしたが、同時に思った。
牡蠣は美味さに対する代償がデカすぎる。
今回の牡蠣小屋に関しては、加熱してるわりに私がビビりすぎなのだが、生牡蠣で想像したら耐えられない。小心者にはなかなか難しい食べ物だ。
ということで、私は生牡蠣の味を知らないまま、人生を終えるでしょう。
未練がないといえば嘘になる。でもそのぶん、他の美味しいものをいっぱい食べてやろうと誓った出来事だった。