日曜日のなのはな

北極を探しにいく・日曜日更新+気まぐれ

副社長と対談してみた話

私の職場はTHE・日系企業という感じの会社だが、そのお堅い企業文化を改革すべく、ここ数年は外部から人を雇って改革本部を作ったり、現場からボトムアップでプロジェクトを立ち上げたりしている。

その一環みたいな形で、経営陣×若手のオンライン対談イベントを主催することになった。

幹部1名と有志の若手メンバー4名がそれぞれ自宅でお酒を飲みながら、リモート接続で対談する。それをZoom Webinarで生配信するという社内イベントである。

きっかけ

企画自体は私の同期が立ち上げたもので、全国の様々な部門の若手が持ち回りで開催する。出演する経営陣も都度変わる。

その同期から私に連絡があり、第3回目となる副社長との対談を任されたというのが事の経緯だ。

「経営陣と若手社員が本音トークをすることで、視聴社員に経営陣をより身近に感じてもらいたい。そしてこの場を借りて若手の意見を経営陣、会社にぶつけていきたい」

そんな熱い思いを持ち、行動に移す同期は凄いと思う。

私はというと、そんな情熱も行動力もない。同期のよしみでお願いされたから、じゃあやるかとなった。それに、イベント企画をやるのは結構好きなのだ。

こんな軽い気持ちで引き受けたのが秋のこと。それから準備が始まった。

メンバーを集める

だが、軽い気持ちでやるには重たいイベントだった(そんなことは最初から明らかだったけどやっぱりそうだった)。

まず、メンバー集めに苦労した。

一人は絶対信頼のおける人にしたかったので、仕事ができてトークも上手そうな後輩に声をかけた。先輩の権力により、もちろんオッケーである。

残り2人のメンバーを集めるためには、自部門の若手会に募集をかけてみた。だが60人以上いる会にもかかわらず、誰一人手を挙げない。

うん、やっぱりそうですよね。忙しいもんね。

ま、若手会で募集をかけたのはみんなに平等にチャンスを与えたよっていう建て付けが欲しかっただけやし?と強がってみたが、そんなことを言ってもどうしようもない。結局、私の独断と偏見で後輩を2人選び出し、個別に依頼した。これも先輩の権力により、オッケーである。

私が先輩である以上、「先輩の権力」がどうしても働いてしまい半強制的にやらせてる気がしてすごく嫌だった。でも若手会で最年長の私が、年次バラバラのメンバーを揃えようとすると後輩を誘うしかなかったのである。

こうなったら後輩たちの顔を売るために絶対成功させねば、という責任感が原動力に加わった。

メッセージを考える

100%オンラインとはいえ、当日までには多くの準備が必要だ。

Webinarの運営部署と段取りを整理してリハーサルを行い、イベントの告知記事を社内ポータルに掲載し、副社長に事前説明をする。副社長が当日に飲むお酒も手配しなければいけない。やり方は確立しているが、手を動かすのは全て私たちだ。

だが、そんな作業は面倒でも大変ではない。メンバー集め以上に大変だったのは、対話のコンセプト構想だった。

後援してもらっている改革本部の人にはこう言われた。

「対談でただ副社長とおしゃべりするのではなく、私たち若手が副社長との対談を通して会社に発信したいメッセージを考えてほしい。」

「上司に言っても取り合ってくれないような若手の意見や問題提起も、いきなり経営陣にぶつけてしまえば変えられるかもしれない。そんな機会にしてほしい。」

私は後輩たちと何度も話し合って、テーマを2つ決めた。

  • 部門間の壁を壊せ!私たちがハブとなるためには ※一部省略
  • 時代は変わった!これからの私たちに求められる営業像とは

このテーマを台本に落とし込んでいく。若手の考えが伝わるように発言と質問を組み立て、流れを作っていくのがまた大変だった。

終わってから振り返ると、もっと当日のアドリブに任せても良かったかもしれない。

でも後輩たちが真剣に考えてくれたおかげで内容に深みが生まれ、若手の存在感が示せたんじゃないかと思う。それに話し合っていくなかで、みんなモヤってることや、秘めてる情熱みたいなものがあるんだと知れて良かった。

こうして約3ヶ月、業務の合間にちまちまと準備を進めて当日を迎えた。

当日

当日、私は自分からかってでたファシリテーター役に至極緊張していた。副社長との事前顔合せすらガチガチだった自分が、なぜファシリテーターをやると言ったのか…

きっと大丈夫、と言い聞かせ、開始まで秒読みになると自分のボルテージを最大限に上げた。

そこからの記憶はあまりない。

ファシリテーターは難しかった。副社長の話にアドリブでコメントし、時間を見ながら質問を足したり削ったりして調整し、裏でみんなに連絡して、でも顔が死なないように気をつけて、とやってたら脳がショートした。

どうやら良い回にはなったようだ(と思いたい)。

副社長は話しやすい快活なおじさまという印象だった。読んでいる本の話やゴルフの話で盛り上がったし、私たちが設定したテーマについても熱く語ってくれた。

対話が終わると、同じ部署の人や同期が連絡をくれた。アンケートの結果を読むと、ネガティブなコメントもあるが好意的な回答がほとんどで、やって良かったなと思う。

何かがすごく変わるわけじゃないけど

この対談をやったからといって何かが劇的に改善するとか、成果が生まれるわけじゃない。今回視聴した社員が果たしてどれほど、意識が変わったかもわからない。

でもこれを何回も続けていくことが大切なんだろうなと思う。まだ次回のメンバーを見つけられていないけど。

そして、対談を通じて得たものは私たちの方が多かった。特に副社長や改革本部の人と話すことで新しい世界を知れたし、自分の無知を思い知った。きっかけは軽い気持ちだったけど、それでも良かったのだ。

最後に。私が副社長に選んだお酒は、東京港醸造さんの「江戸開城」。都会のど真ん中で美味しいお酒を造るという挑戦に挑んでいるその精神を、私も見習いたいなと思う。

東京港醸造株式会社

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