6年ぶりにサカナクションのライブに行った。
魚民(ファンの呼び名)と自称するには恐れ多いが、高校生の頃に友達から『アルクアラウンド』を教えてもらったことをきっかけにずっと聴いている。美しいメロディーとカッコいいアレンジが大好きなのだ。
そんなサカナクションのライブは、レーザーライトなどの照明演出にすごくこだわっている。没入感がハンパなくて、6年前のライブは印象に強く残っていた。
今回のライブは『SAKANAQUARIUM アダプトツアー』。演出には舞台の要素もあるらしく、どんな感じになるんや?と思っていたら、没入感は健在。むしろパワーアップしていた。
◯億円かけて建てたらしい(?!)アダプトタワーという巨大セットで、女優の女の子が舞う。両側のディスプレイに映される映像。包み込まれるような音響。そして照明の全てが組み合わさると、まるでMVの中に入り込んだような心地がした。
名曲『目が明く藍色』は一本の映画を観るほどの充実感。気がつけば涙が流れていた。なにに感動したとかいう説明がつかない。ただひたすら音楽に心が揺さぶられて出た涙だった。
終始、美しくカッコいいサウンドを全身に浴びて頭がクラクラする不思議な時間だった。
円盤化されていない最新曲から代表曲まで休みなく続き、あっという間にアンコール。MCではメインボーカルの山口一郎さんがサンタコスで登場し、会場が湧く。
僕たちがデビューした15年前の曲です、と『三日月サンセット』『白波トップウォーター』を歌ってくれた。大好きな曲だ。
最近のサカナクションとはまた少し違う雰囲気に、山口さんが『ミュージック』という曲の解説で話していたことを思い出した。
ミュージックの歌詞はこんなフレーズで終わる。
いつだって僕らを待ってる まだ見えないままただ待ってる だらしなくて弱い僕だって 歌い続けるよ 続けるよ
「歌い続けるよ」って少し青臭いし、若いときしか説得力がないよね、と山口さんは言った。だからあのとき、この曲を作って良かったと。
山口さんが作る音楽はどれもそのときしか生まれないものだ。山口さんの一瞬の叙情を切り取った、かけがえのないもの。
それはどの芸術にも通じる。
アーティスト達はそうやって、すぐ通り過ぎてしまう叙情をつかまえ、磨きあげて芸術という形に残す。
15年前のサカナクションと今日のサカナクションは違う。その儚さと、それでも曲を通して15年前のサカナクションの欠片を感じられる嬉しさで胸がいっぱいになった。そして、人生の時間を削って芸術を世に生み出してくれるアーティストへの尊敬の念も。
最後のMCで、山口さんはコロナ禍の2年で感じたことを語った。
コロナによって、毎日通勤していた私たちの生活はステイホームに変わった。アーティストである山口さんはそれを見て、自分とファンの生活スタイルが近づいたと感じたそうだ。みんなと共有できる感覚の範囲が広がったのではないかと考えたという。
これまでのCD+ライブとは違う、今の生活スタイルに合った表現方法ができないかと、オンライン配信とリアルライブを組み合わせた今回のツアーを考えた。オンライン配信で新曲を披露し、リアルで観たい人はライブで再び聴く。そこに新しい見え方が生まれることを狙った。
「変わらないまま、変わっていきます」と山口さんは言った。
その言葉はまさに私が半年前に綴った、サカナクションが好きな理由だった。
そして観た、今回のライブ。6年前のライブとも違う、新たな感覚に私は驚いた。
もしかしたら、山口さんの考えが高尚すぎてその全てを理解できていない時もあるかもしれない。そうだとしても、これからも変わっていくであろうサカナクションの「その瞬間の芸術」は私を新鮮な感動に導いてくれるはずだ。それについていきたい。
そんな、これからの期待とワクワク感を抱かせてくれたエンディングだった。
最後に。山口さん、グッズ買いました!!!